はづれぐさ

“はずる”シリーズ(旧キャストパズル)を中心に、感想・よしなしごとを書くブログ

キャストシリンダー/CAST CYLINDER 感想

“はずる”シリーズより、キャストシリンダーについて書きます。
大きなヒント・ネタバレを含む部分はクリックしないと見えないように隠しますが、まっさらな状態で取り組みたい場合は読むのをご遠慮ください。


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キャストシリンダー CAST CYLINDER
評価:★★★★★☆
デザイナー:Vesa Timonen
発売年  :2013年

公式難易度:★★★★☆☆
体感難易度:★★★★★☆
クリア時間:外すのに35分、戻すのに1時間35

 

「シリンダー」と聞いて、あなたは何を想像しますか? これは円筒を意味する言葉ですが、なんだか便利に使われ過ぎている節があって、この世にはそう呼ばれているものが随分あります。シリンダー錠に、リボルバーのシリンダー。他にもエンジンの部品だったり、印刷機の部品だったり、はたまたダイバーが背負ったり……。
答えは十人十色だと思います。が、キャストシリンダーを解いたことがある人なら、真っ先にこのパズルを思い浮かべるはず。それだけのポテンシャルを秘めています。

さて、シリンダーは内部に仕掛けが施された、からくりボックス系のパズルです。隠れた構造があるというのは、ある意味でアンフェアです。多くの“はずる”には、「見えている」という最大の保証があります。どんなに複雑でも、手の内は全て明かしてから勝負を始めようとする誠実さがあります。その点シリンダーは、もはや手の内しかありません。手荷物検査で引っかかりそう。外見上のヒントはほぼゼロで、挑む者は暗中模索を強いられることになります。

では闇雲に弄るだけなのかというと、もちろんそんなことはありません。始めてしばらくすれば、ちゃんと光明は見えます。可動範囲を頼りに中身を想像し、徐々に歩を進める感覚は、まさにからくりボックス系の醍醐味ではないでしょうか。やがて明らかになる内部構造は、独創的かつシステマチック。工場見学の動画とか好きな方にはストライクな気がします。
タネは割れたし戻すのは簡単だろうと思いきや、それは間違いです。私が外しながら理解したのはメインのギミックだけで、細かな手順は成り行きに任せていたに過ぎないのだと思い知らされました。パーツが5個もあることも、難しさに拍車をかけています。
なんとか根気で成功しましたが、中で起こっていることをちゃんと把握するには、さらに3往復ほど必要でした。「外す」「戻す」のあとに、「解する」という第三形態が存在しているのです。デスタムーアです。

その後も、私は度々シリンダーを遊んで、今となっては隠れているはずの内部構造が目に見えるほど成長しました。知識と経験が増えることで、今まで見えなかったものが見えるようになり、世界の解像度が上がる喜び。キャストシリンダーを解いたあとには、普段使いしている色んな道具の仕組みを知りたくなるかもしれません。

以下、解けない方向けのヒントです。

ヒント①

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初期状態から目に見える変化はあったけれど、そこからちっとも進めないという場合は、間違ったルートを選んでしまった可能性が高いです。幸い、行き止まりからも得るものはあります。どうしてその変化が可能になったのか、変化後に動かなくなった部分はどこか、よく考えて、パズルの暗部を暴いてやりましょう。
 

ヒント②

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ある程度構造が推測できたなら、パズルの表面に何か目印をつけるのも手です。テープでもなんでもいいので、内部の状況を把握できるようにすれば、ぐっと解きやすくなるはずです。
 

以下、ネタバレを含みます。解いてからご覧ください。

ネタバレあり感想

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初期状態からリングを回転させることで、内側の三つのパーツのどれか一つを押し込むことができます。それぞれのパーツについて二方向に可動するから、ルートは全部で六本。この中から、唯一の正解を探すことになります。
私は最後に正しい道を引き当てたのですが、思えばこれは運が良かった気がします。万が一(実際には六が一)最初から正解していたら、シリンダーのメインとなるパーツの噛み合いのギミックについて、全然分からないまま外れてしまったでしょう。
……ところで、「シリンダー」「回転」「6分の1」と来れば、否応もなくロシアンルーレットを思い浮かべてしまうのは私だけでしょうか。キャストシリンダーで試されるのは度胸ではなく観察力なので、ご安心を。