はづれぐさ

“はずる”シリーズ(旧キャストパズル)を中心に、感想・よしなしごとを書くブログ

キャストレフ/CAST L'OEUF 感想

“はずる”シリーズより、キャストレフについて書きます。
大きなヒント・ネタバレを含む部分はクリックしないと見えないように隠しますが、まっさらな状態で取り組みたい場合は読むのをご遠慮ください。


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キャストレフ CAST L'OEUF
評価:★★★★★☆
デザイナー:Oskar Van Deventer
発売年  :2004年

公式難易度:★★★★☆☆
体感難易度:★★★★☆☆
クリア時間:外すのに1時間20分、戻すのに40分

 

l'oeufはフランス語で卵を意味するoeufに定冠詞のleが付いたもの……要するにthe eggって意味です。*1なんでタイトルがフランス語なのかは分かりませんが、鶏のマークも手伝って、私はスポーツウェアブランドのルコックを連想しました。もっとも大抵のパズルは動きにくい服装でも楽しめます。

作者のオスカーさんは迷路系“はずる”の名手で、レフもその一つ。2枚の卵型プレートに彫られた道は洞窟のように曲がりくねっていますが、分岐はありません。これのどこが迷路なんだと思ってしまうけれど、触ってみると成程これは迷路です。例えば、トランシーバーを持った二人がそれぞれ別の洞窟に入って、電波が届くギリギリの位置を模索しながら進むとしたらどうでしょう。これはそういうパズルなのです。
ともすれば迷路系は、片っ端からルートを試していくような、ある種単調なものになります。レフもそうといえばそうなのですが、これはとっても面白かったです。すいすいと進める気持ち良さと、思うように動かないもどかしさが交互にやってきて、非常に解き心地がいい。手に伝わってくる感触も、唯一無二のものだと思います。

ちょっと気になるのは、造形上仕方ないことですが、耐久性です。一目で分かるように、かなり細くなっている部分があります。コロンブスは卵を潰すことでテーブルに立てましたが、戻すことも要求されるキャストレフに力技は禁物です。
……と言いたいところなのですが、製造時期によってはかなり動きが悪いモデルもあるようです。私が入手したものは問題ありませんでしたが、大量生産に向かないデザインである感は否めません。鶏が毎日卵を産むのは、あくまでも品種改良の賜物なのです。

ところでこのパズル、旧パッケージでは、「アントワープでの第2回世界パズルデザインコンペティションで入賞したものを、卵型にして強度を加えた」と紹介されています。*2
では、卵型になる前は?
同コンペのエントリーリストを見る限り、「Taxi」というパズルがそれのようです。彫られた溝の形こそ違いますが、仕組みはまったく同じで、ただ全体のフォルムはタクシー型。卵になったのは、溝が殻に入ったヒビを思わせるからでしょうか。なんにせよ、タクシーから卵に生まれ変わるなんて驚きです。テッポウオからのオクタンみたい。*3

以下、解けない方向けのヒントです。

ヒント

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上述のように、元となったパズルはタクシーの見た目でした。タクシーというのは、乗客をあちらこちらへと運ぶため、同じところを何度も行ったり来たりする車です。目的地に着いたからといって、元居た場所まで戻るのを躊躇する必要はなんらありません。
 

以下、ネタバレを含みます。解いてからご覧ください。

ネタバレあり感想

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金色の面が進んだかと思うと銀色の面が詰まり、銀色を進めてみると今度は金色が引っかかり……。結果、解き進めているうちに、パズルを何度も裏返すことになります。しかも、銀色を序盤から先に進めるためには、金色で一度ゴールまで行ってから戻るような操作が必要だったりして、私はここでかなり悩みました。
根幹となるギミックを変えずに、いくつものバリエーションを作れるパズルですが、その中でこのモデルを選んだのはさすがの手腕としか言いようがありません。

*1:テニスで0点をラブと呼びますが、これはl'oeufから来たと言われています。0は卵形だからだとか。

*2:ネットで結果を見る限り、入賞しているのは同作者のキャストチェーンの方です。ただ、このコンペは国際パズルパーティーというクローズドな催しの中で行われているもので、詳しい内容は外からは分かりません。公表されていない特別賞的なものがあった可能性もあります。

*3:一応、テッポウオがオクタンになるのは、鉄砲→タンクという繋がりです。