はづれぐさ

“はずる”シリーズ(旧キャストパズル)を中心に、感想・よしなしごとを書くブログ

キャストパドロック/CAST PADLOCK 感想

“はずる”シリーズより、キャストパドロックについて書きます。
大きなヒント・ネタバレを含む部分はクリックしないと見えないように隠しますが、まっさらな状態で取り組みたい場合は読むのをご遠慮ください。


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キャストパドロック CAST PADLOCK
評価:★★★★★★
デザイナー:JinHoo Ahn
発売年  :2016年

公式難易度:★★★★★☆
体感難易度:★★★★★☆
クリア時間:外すのに2時間40分、戻すのに45分

 

元は2014年の世界パズルデザインコンペティションに「Cassette」という題で出品され、佳作を受賞した作品です。ハナヤマからキャストパドロックとして発売されたのは少し経ってからで、2016年の1月。これはシリーズの名称がキャストパズルから“はずる”へと変わる半年前のことで、パドロックは期せずして一つの時代を締めくくる作品となりました。旧パッケージのパドロックは、昭和64年の硬貨みたいに価値がつくかもしれません。

パドロックとは南京錠のことで、確かにそんな感じのフォルムをしていますが、トリックロック*1という訳ではありません。目標はあくまでも、四つのパーツへの分解。形が似ているだけで、実態は南京錠とは全然違います。トランペットとムカデメリべ*2くらい違います。
例えば黒いパーツの片方には鍵穴がありますが、残念ながら差し込むべき鍵は用意されていません。というかこれはキャストパズル化に際して追加された単なる刻印で、完全に装飾的なものです。それに、南京錠という言葉の堅牢なイメージに反して、パーツどうしの隙間が大きく、かなり緩い造りになっています。せいぜい軟禁でしょう。化けの皮はすぐに剥がれ、未知の物体との戦いに挑むことになります。

緩い造りだと書きましたが、決して簡単に外れるという意味ではなく、そこはレベル5の威厳を見せてくれます。パーツを動かすことはできても、「どうして動いたのか」「このあとどう動かせばいいのか」を把握するのが困難です。私はある程度弄ったあとで最初まで戻して、次の日に持ち越そうとしたのですが、よくよく見て冷や汗をかきました。初期状態に戻したつもりになっていたその形が、パッケージ写真と異なることに気づいたのです。
慌ててまた再開して、一体何が起こったのか探ろうとしているうちに、スルリと。思いがけないタイミングで、外れてしまいました。目の前にはバラバラになった四つのパーツという結果があるのに、自分が辿った過程が分からない。恐怖体験です。
戻す行程は、失われた記憶を取り戻す旅路のようでした。さぞ険しい道だろうと覚悟したのですが、意外にも順調に進み、やがて初期状態に辿り着きました。パッケージと何度も見比べて一致を確認したときには、達成感というより安堵を覚えたものです。

手順を知った今となっては、外すのも戻すのもスムーズです。解法はとても美しく、簡単に忘れることはないでしょう。でも、仕組みを完璧に理解した訳ではありません。こんなに単純なパーツの構成で、外すためにあんな動きを強いることができるだなんて、未だに不思議でなりません。キャストパドロックを真の意味で開錠するためには、これからも何度も挑戦する必要がありそうです。

以下、解けない方向けのヒントです。

ヒント①

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注目すべきは、外側のフレーム状のパーツにある切り欠きの位置です。これがパッケージと違う状態になっているなら、少なくとも進展はしています。
 

ヒント②

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パーツの収まり方の緩さが、一歩先のステップへと進むための大事なポイントです。
 
以下、ネタバレを含みます。解いてからご覧ください。

ネタバレあり感想

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黒いパーツどうしが離れた状態からは、二通りの閉じ方ができます。一方は今来た道、もう一方が進むべきルートなのですが、私はこれをどう切り替えればいいのか、長らく分かっていませんでした。何度も開いて閉じてを繰り返し、偶然の進展を待っていたような気がします。
ところで原題の「Cassette」ですが、これはパカっと開いたときの形が、二つのリールと巻かれたテープを連想させるからでしょうか。途中プレッツェル的な形にもなりますし、なかなか表情豊かなパズルです。

*1:カニカルパズルの一種です。内部に特別な機構があって、普通の方法ではツルが動かない錠前のことです。

*2:海洋生物の一種です。口部に特別な器官があって、普通の方法では餌を捕らないウミウシのことです。