はづれぐさ

“はずる”シリーズ(旧キャストパズル)を中心に、感想・よしなしごとを書くブログ

キャストスライダー/CAST SLIDER 感想

“はずる”シリーズより、キャストスライダーについて書きます。
大きなヒント・ネタバレを含む部分はクリックしないと見えないように隠しますが、まっさらな状態で取り組みたい場合は読むのをご遠慮ください。


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キャストスライダー CAST SLIDER
評価:★★★★☆☆
デザイナー:Vesa Timonen
発売年  :2019年

公式難易度:★★★☆☆☆
体感難易度:★★★☆☆☆
クリア時間:外すのに40分、戻すのに7分

 

スライドするパズルと聞くと、15パズル*1を思い浮かべる方は多いでしょう。15パズルはバラしてしまうと、絶対に戻せない配置になることもあるので要注意ですが、キャストスライダーは“はずる”の一つ。心置きなく分解に臨むことができます。

外箱の紹介文には、「ポケットにそっと忍ばせておきたい」とあります。これは、どことなく折りたたみナイフに似ていることからの着想でしょうか。アウトドアやミリタリーが好きでなくとも、人間誰しも折りたたみナイフに惹かれる時期があるものです。リーマーとかワイヤーストリッパーとか付いた十徳ナイフに憧れるものです。
キャストスライダーはマルチツールとは無縁の一徳パズルですが、確かに持ち歩きたい気持ちは分かります。滑る動きが爽快で、ついつい動かしたくなる、フィジェットトイとしての魅力があるのです。表面を梨地処理にしてあるのも、たくさん弄っても傷が目立たないようにじゃないでしょうか。別に危ないものじゃないので、そっと忍ばせておく必要はない気もしますが、いつもパズルを携行してる人は間違いなくマイノリティです。*2結構音も出るので、TPOに気をつけて弄りましょう。

外すパズルとしては、簡単そうに見えて一筋縄ではいきません。私は最初、動きを楽しんでいるうちに外れるだろうとたかをくくっていましたが、適当に弄っても同じことが繰り返されるばかり。「お! この動きは始めてかも!」と喜ぶのもつかの間、それは初期状態に戻る動きでした。どう外れるのか考えても、なかなかイメージが沸かず、結局総当たりモードになって解いてしまいました。試せることはそう多くないので、難易度3は妥当かな。でも、終わってみればかなり納得感のある解法なので、もっともっと考えて解けば良かったという後悔があります。

キャストスライダーは数ある“はずる”の中でも、かなりシンプルな構造をしています。微妙な隙間やカーブの助けを借りず、極限まで削ぎ落とされたミニマルなデザインからは、まったく機能的じゃないのに機能美を感じます。パズルなんていう、そもそも無駄の塊のようなものが、こんなに無駄のない造形で成り立っているなんて、エスプリが効いていますね。

以下、解けない方向けのヒントです。

ヒント

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このパズルは、二つの長方形のパーツと、円盤状のパーツからできています。難しさの大きな要因となっているのは、円盤の真ん中にある突起です。コイツを削ぎ落としてしまえば、端までスライドさせた状態から簡単に外れるはずですが、残念ながらルール違反です。突起に邪魔されないためには、他にどんな手段があるでしょうか。
 

以下、ネタバレを含みます。解いてからご覧ください。

ネタバレあり感想

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二つの長方形のパーツには、それぞれ「←SLIDER→」の刻印がありますが、これは外すときの目印になっています。末尾の矢印の先に、もう片方の長方形の端を合わせた状態に持っていくと、容易に外すことができるのです。人によっては初見時のヒントになるのかもしれませんが、私がこれに気づいたのは外して戻してを複数回繰り返した後でした。思いがけず近道を見つけたような嬉しさがあって、何度も遊びたくなるキャストスライダーにぴったりの仕掛けだと思います。

*1:4×4の枠内に嵌められた15枚のパネルをスライドさせて並び替えるアレです。駄菓子屋さんとかに置いてあることもあります。もしかすると、私が初めて遊んだメカニカルパズルかもしれません。

*2:“はずる”シリーズ(旧キャストパズル)の生みの親、故・芦ヶ原伸之さんはキャストフラグを持ち歩いていたそうです。