キャストフラグ/CAST FLAG 感想
“はずる”シリーズより、キャストフラグについて書きます。
大きなヒント・ネタバレを含む部分はクリックしないと見えないように隠しますが、まっさらな状態で取り組みたい場合は読むのをご遠慮ください。
評価:★★★★☆☆
デザイナー:Nob. Yoshigahara(過去の名作を、Nob氏が設計監修のうえ復刻)
発売年 :1994年
公式難易度:★☆☆☆☆☆
体感難易度:★☆☆☆☆☆
クリア時間:外すのに6分、戻すのに3分
キャストフラグは、八角形の金属の塊から、旗のような形状のパーツを取り外すパズルです。一時は廃番となっていましたが、2018年に復刻され、カラーリングが銅から銀へ変更されました。
この作品はキャストホースと共に、私がはじめて購入した“はずる”です。立ち寄った書店の一角に小さく展開されたコーナーで、並んでいたのは十種類くらい。とりあえずは簡単なものをやってみようと、唯一のレベル1だったキャストフラグを手に取りました。
もしかすると、最初がフラグというのは珍しいケースかもしれません。“はずる”は高難度の作品の方が売れているようですし、もっと品揃えが潤沢な店舗なら、見た目に華のあるものが選ばれるでしょう。
フラグ、華ないです。プライベートブランドのお菓子のパッケージぐらい華ないです。道端に落ちていても拾われない“はずる”ランキングでは上位に食い込むと思う。*1
でも、色々なパターンの“はずる”をやった今になって、最初の一つとしてフラグを解くことができたのは、もっけの幸いだと思っています。
もちろんレベル1なのでクリア自体は簡単ですが、解く過程でちゃんと発見があるのです。形を観察したり、弄り回したりするうちに糸口が見つかって、パーツを頭の中で描いたとおりに動かして……という一連の流れが、非常にコンパクトにまとまっています。スーパーマリオブラザーズの1-1みたいな、よくできたチュートリアルステージって感じです。旗だけに。
また、動かす上での手触りも良好です。可動域が分かりやすいですし、重量感があって頑丈なので、心置きなくカチャカチャ弄れます。
“はずる”に込められたアイデアは様々で、中には突き抜けた個性を持つ作品もあります。その多様性は大きな魅力ですが、最初から異端児を相手取るのは難しく、場合によってはシリーズ全体への誤解にも繋がるでしょう。*2その点キャストフラグは実に素直で、けれど独自性も備えていて、文字通り旗手を務めることのできる作品だと思います。
総じて、ぜひ未経験者に勧めたい“はずる”なのですが、シンプルさは短所にも成り得ます。パッケージには「パズルを解く“楽しみ”と“苦しみ”を十分に味わっていただくため、解答図は入れておりません」とありますが、足の甲に落としでもしない限り、フラグから“苦しみ”を味わうことはないでしょう。私は外して戻すのに約10分かかりましたが、人によっては5分もかからないかも。“はずる”はどれも同じ定価ですし、せっかくなら長く楽しみたいというのは自然な感情だと思います。腕に覚えがある方は、もう少し難易度の高い作品から始めてみてもいいでしょう。
余談ですが、この作品の紹介文には、「19世紀末の英国の名作と、その後出現したアメリカの名作を参考にし、かなりの創作を加えて誕生したパズル」と書かれています。元となったパズルについては、1898年のアメリカ特許*3に同じギミックのものがあり、その図面を見ることができます。*4キャストフラグと比べてみると、一番の違いは「旗」の有無でしょう。元ネタでは旗の代わりに半球状の突起が付いていて、FLAGのFの字もありません。この旗は、解法に直接影響する訳ではありませんが、おかげでぴったり収まった明確な初期状態が生まれるし、遊んでいると実に適したモチーフであることが分かります。
面白さを格段に引き上げた、素晴らしいアレンジだと思います。
以下、解けない方向けのヒントです。
ヒント
*1:1位はナットケースかユー&ユーです。ただの機械部品だと思われるからです
*2:多分、最初に買ったのがキャストニューズなら、私はシリーズを集めていなかったかもしれません。
*3:US596633A - Puzzle - Google Patent
*4:ただ、過去の公式プロモーションビデオ(【キャストパズル動画】CAST FLAG 5本目/全22本 - YouTube)では、「原型は1920年アメリカ特許品」とされています。それっぽい特許を探しても見つけられなかったのですが、1898年のものをベースにした改良版があったのかもしれません