はづれぐさ

“はずる”シリーズ(旧キャストパズル)を中心に、感想・よしなしごとを書くブログ

キャストオーギア/CAST O'GEAR 感想

“はずる”シリーズより、キャストオーギアについて書きます。
大きなヒント・ネタバレを含む部分はクリックしないと見えないように隠しますが、まっさらな状態で取り組みたい場合は読むのをご遠慮ください。


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キャストオーギア CAST O'GEAR
評価:★★★☆☆☆
デザイナー:Oskar Van Deventer
発売年  :2002年

公式難易度:★★★☆☆☆
体感難易度:★★☆☆☆☆
クリア時間:外すのに20分、戻すのに10分

 

元々は、2001年の第1回世界パズルデザインコンペティションに出品された「Sunflower」というパズルで、カラーリングもヒマワリを模したビビッドなものだったようです。キャストパズルとして発売されるにあたって、くすんだ銅色の歯車へと転身を遂げました。もしかすると、真ん中にハナヤマのロゴが大きく入っているのは、花モチーフだったことからの着想かもしれません。

正直なところ、外すパズルとしてはいまひとつかと思います。一手目、どんな動きをするのか分かった瞬間がこの作品のピークです。山頂からは麓のゴールと、そこに至るまでの道筋が見渡せます。道は分岐が多く入り組んでいるものの、雲がかかっていたり、極端に細かったりすることはありません。どこから外れるのかすぐに分かる“はずる”は他にもあって、*1それ自体が悪い訳ではまったくないけれど、オーギアの場合は過程が単調なのです。
形状をよく観察して、最短の経路を論理的に考えて……という段階まで行ければもっと楽しめそうですが、私のレベルでは総当たり的な解法になってしまいます。

それでも星を三つ付けているのは、造形の魅力からです。箱に手裏剣が突き刺さったようなデザインはインパクトがあって、玄関とかに飾っておきたくなります。また、どんな動きか分かった瞬間がピークと書きましたが、その標高はめちゃくちゃ高いです。本当に、よくこんな動きをする立体物を思い付いたものだと感嘆します。作者のオスカーさんは、他にも良い意味で訳の分からない見た目の立体パズルをたくさん作っている方で、眺めているだけでも楽しめます。

ところで。
後から解き方の動画を見て知ったのですが、かつてのキャストオーギアには二通りの外し方があったようです。私が持っているものは片方の解法でしか外れないので、おそらく別解を潰すために調整が入ったのでしょう。“はずる”シリーズは別解を良しとしないスタンスですが、オーギアの別解は中々エレガントなので、ちょっと残念な気もします。

もう一つ、ところで。
このパズルの名前ですが、なぜキャスト「ギア」ではなく「オーギア」なんでしょうか。キャスト○○の部分には、基本的には意味のある単語が入るけれど、o'gearというのは聞き慣れない言葉です。jack o' lanternの「o'」と同じならofの短縮ですが、これだけ唐突にofが入る意味も分かりません。gottle o' gearという、腹話術士がビールのビン(bottle o' beer)と言ったときの発音から生まれた成句があるようですが、これも関係なさそう。キャストギアという名称が既に何かで使われていた可能性もありますが、少し調べた限りでは、発売された2002年より古そうなものは見つかりませんでした。
結局これだ!という答えは分からず、個人的にはキャストオーギアに残された最後の謎となっています。「そもそも歯車が鋳造(casting)で作られることがあるので、cast gearだと特定の商品名っぽくない」というのが有力な気もするのですが、どうでしょう?
他の人が誰も引っかからないところで引っかかってみるのも、“はずる”の醍醐味です。
多分。

以下、解けない方向けのヒントです。

ヒント

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どこから外れるのか分からない場合、箱のそれぞれの面に空いた穴を見比べてみてください。
……そんなの分かってる!!!という方には、なかなかヒントらしいヒントが思いつきません。強いて言えば私の場合、動く場所と動かない場所の区別が、解けるまで付いていませんでした。かなりの少数派かもしれませんが、もし同じ悩みを抱えている方がいたら、ギアではなく箱の方に注目してみてください。
 

以下、ネタバレを含みます。解いてからご覧ください。

ネタバレあり感想

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前述したように、sunflower(ヒマワリ)からgear(歯車)に改名されたパズルです。ヒマワリと歯車の共通項といえば「回転」ですが(「油」派の方も一定数いるかもしれませんが)、両者の回り方は異なります。その点キャストオーギアは、箱の面上ではヒマワリのように、面から面へ移るときは歯車のように回ります。どちらも捨てがたいネーミングですが、面白いのは後者の動きだと思うし、何より金属製だし、やっぱりギアの方が嵌っている気がします。
ちなみに、ヒマワリが太陽の方を向いて回るのは成長途中の話で、花が咲いてからは動きません。知識として知っていても、刷り込まれたイメージは怖ろしく、私の頭の中ではヒマワリの花が回り続けています。
こういった思い込みは、パズルを解く上での障壁になります。かつてのオーギアに存在していた別解は良い例で、本来使わないはずの面取りされていないエッジから外すことになるのです。もしこれが正規ルートなら、難易度の星が2つ足りないでしょう。デザイン段階で別解がスルーされたのも、まさかこんなところから外れる訳がないという思い込みのせいだと思います。
パズル好きの端くれとして、常にフラットな頭を持ちたいところですが、マウンテンデューを最近までマウンテンビューだと思っていたので難しそうです。

*1:私が遊んだ中では、同じ迷路系のキャストレフ。毛色が違うものではキャストデビルなんかも外れる位置はすぐ分かります。どちらも傑作です