はづれぐさ

“はずる”シリーズ(旧キャストパズル)を中心に、感想・よしなしごとを書くブログ

キャストシーブリーム/CAST SEABREAM 感想

“はずる”シリーズより、キャストシーブリームについて書きます。
大きなヒント・ネタバレを含む部分はクリックしないと見えないように隠しますが、まっさらな状態で取り組みたい場合は読むのをご遠慮ください。


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キャストシーブリーム CAST SEABREAM
評価:★★★☆☆☆
デザイナー:Akio Yamamoto
発売年  :2010年

公式難易度:★☆☆☆☆☆
体感難易度:★☆☆☆☆☆
クリア時間:外すのに2分、戻すのに2分

 

1999年から2000年にかけて、ヤマモトアキオさんは、海の生き物をモチーフにした一連の知恵の輪を世に送り出しました。全六作品から成る、キャストパズル(現はずる)のマリンシリーズです。通常のキャストパズルよりもサイズが小さく、当初はチェーン付きのキーホルダーとして発売されたようです。のちにチェーンがなくなっても、あくまでも小型の箱に入れられ、いわば番外編の立ち位置でした。
転機が訪れたのは2010年! ブラッシュアップされ、本流のキャストパズルシリーズとして再デビューを果たしたのです!*1単にサイズが大きくなっただけじゃない、造形もより緻密に! 立てた状態で置けるように! 併せてそれぞれ名前も変更に! 乗るしかない、このビッグウェーブに! ……という感じだったのですが、海は過酷で、キャストパズルが“はずる”となる前にすべて廃番となってしまいます。
ただ、その後まったく出番がない訳じゃなく、2020年、2021年には数量限定の“はずる”パッケージで復刻され、オンライン販売。2022年には、一週間だけオープンした“はずる”のポップアップストアの店頭で販売されました。私はポップアップストアで買ったぜ!*2

さて、今回取り上げるのはキャストシーブリームです。Seabreamとは聞きなれない英単語ですが、スズキ目タイ科の魚のこと。リニューアル前はキャストタイという名前で、「結ぶ」と「鯛」のダブルミーニングになっていました。*3金色の鯛と銀色の鯵がもつれ合ったデザインなのですが、鯵の存在はタイトルでは捨象されています。
さらに言えば鯛のほうも、作者さんによるお話*4ではアマダイ(スズキ目キツネアマダイ科)らしく、Seabreamという英訳はいまいちハマらない気がします。
さらにさらに、英語版ではCast Trout(鱒)という商品名が付けられており、もはやスズキ目ですらなくなっています。とにかく魚ってことだな!

難易度はレベル1で、実際簡単です。派手なギミックもなく、考えて解くというよりは、いつの間にか外れているパズルかな。改めて手順を確認してみると、それぞれのパーツの突起と隙間を活かした、オーソドックスな解法です。狭い道をするりと抜ける気持ちよさは、昔ながらの針金の知恵の輪にとても似ています。
ただ、シーブリームの場合は、造形がその気持ちよさのブースターとなっているのが特徴です。凹凸が多いおかげで、針金では出せない嚙み合いの妙を感じられます。
それに、魚をかたどっていることも大きいですね。マリンシリーズ全般に言えることですが、生き物の見た目をしているだけで、無機質な金属の動きにストーリーが生まれます。スズキ目の覇者を争っているかもしれませんし、異類婚姻譚*5的なやつかもしれません。鯛×鯵なのか鯵×鯛なのかで争う界隈があるかもしれません。

最近の“はずる”は、華美な意匠を削ぎ落したモダンなデザインが支配的となっています。私自身、どちらかと言えば好みはそちらに寄っていますし、世間もまだまだシンプルを求めている気がします。そういう意味では、シーブリームをはじめとするマリンシリーズは、今の時代には生まれにくい知恵の輪かもしれません。先述したように、装飾したからこその良さもありますし、裾野は広いほうがいいでしょう。残念ながら廃番になってしまいましたが、今後も節目節目で手に入る機会があれば嬉しいですね。

以下、解けない方向けのヒントです。

ヒント

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外すとき、戻すときのどちらも、初手で正解とは反対の方向に進んでしまうことができます。完全な一本道ではないので、初期状態に戻ることはいとわず、いろんな角度を試してみましょう。
 

以下、ネタバレを含みます。解いてからご覧ください。

ネタバレあり感想

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キャストタイが渾身の命名だっただけに、鯛を直訳しただけのシーブリームはやっぱりちょっと気になります。この知恵の輪では、まず鯵の背びれが鯛の尾びれを抜け、次いで鯛の背びれが鯵の尾びれを抜け、最後には尾びれどうしから外れることになるので、キャストフィンなんかどうでしょう。と思いきや、フィンも旧マリンシリーズですでに使われているのです……。

*1:2010年というのは、ハナヤマから発売となった年です。当時、書店での販売は永岡書店という会社が受託しており、そちらでは2009年時点で大きくなったマリンシリーズが買えたそうな。

*2:ポップアップストアに着いた時点ではマリンシリーズが売り切れで、ダメ元でスタッフさんに聞いてみたら、「今まさに在庫を取りに行っています」とのことでした。そこそこ待ちましたが、幸い店頭はパズルだらけで、世界一時間を潰すのに困らない場所でした。ハナヤマの方ともお話できて、楽しかったです。

*3:スペリングはCAST TIEなのですが、最初期のパッケージは間違ってCAST TAIと刷ってしまったらしいです。後から振り返れば笑い話かもしれませんが、ちょっと胃が痛くなるエピソードです。……アニサキスかな。

*4:キャストパズル設計の思い出話 - YouTube

*5:人間と人間以外が結婚する昔話の類型です。人と蛤が結婚する話とかあるしアマダイと鯵なら余裕余裕。